連載#25「〆切とものづくりのはなし」

2025年10月15日

倉田紗希

 すっかり涼しくなりましたね!外に出たら身の危険を感じる暑さもようやく終わり、秋の風が心地よい季節になってきました。本当に夏が長すぎましたね。

さて、連載25回目は倉田が担当します。

ここ最近は、9月末〜の個展に向けて作品制作を続けていました。

↓会期は無事終了し、沢山の方にお越しいただきました。


倉田紗希 個展
会期 : 2025.9.25(木)-10.5(日)
会場: Gallery Blue 3143
開廊時間 : 13:00-20:00 ※月曜休廊
場所 : 東京都港区南青山3-14-3 2F

_________

では本題のブログに入っていきます!最近考えていた事を色々書いてみます。

創作と〆切、制作のはかどりについて

 みなさんは「〆切」にどんな思い出がありますか?例えば、プレゼン資料を徹夜で完成させてなんとか提出間に合った、とかコンペの〆切に間に合わせるため色々な友人や先輩に協力してもらった、とか全ての人に何かしら「これあったよねー!」と振り返る思い出があると思います。

今回の展示準備の期間、私は「創作と〆切」について考えていました。私が今やっているものづくりはここまでやったら終了という明確な基準がないので完成のラインは自分次第になります。

特に抽象絵画の場合だと、頭の中のぼやっとしたイメージを少しずつ拾って制作していく感じなので、ある時突然完成だ、と作品が見えて出来上がる時もあるしずっと画面が決まらなくて、完成しないものがあったり、制作のリズムが一定でないので時間との付き合い方が難しい所があります。

こうか?こうでもないか?1筆ずつ頭に浮かんだイメージに近づくように絵を描いています。

そんな性質だけど作品提出の〆切はやってくる。。

過去の偉人や、クリエイティブに関わる人たちは迫りくる〆切と創作とどう折り合いをつけていたのだろう?

そういう事を考えていたら、ちょうど〆切について書いた本と出会いました。その名も『〆切本』。

本の概要をアマゾンの文章から抜粋しますね。

” 追いつめられて苦しんだはずなのに、いつのまにか叱咤激励して引っ張ってくれる……
〆切とは、じつにあまのじゃくで不思議な存在である。
夏目漱石から松本清張、村上春樹、そして西加奈子まで
90人の書き手による悶絶と歓喜の〆切話94篇を収録。
泣けて笑えて役立つ、人生の〆切エンターテイメント! “

すごく面白そうじゃないですか?読みたい本リストに早速追加しました。

制作中のアトリエの様子。メモや参考写真など色々貼ってある。

制作を進めるためのライフハック的なもの

 制作のリズムが難しいとは言え、作品が次々と完成する時もあります。それは自分の頭がスッキリしていて決定的な1筆1筆を置けた時。そのコンディションの時は、次の1手はこうしよう、ここをこの質感で塗ろう、というのが明確にわかる感覚がします。

1人で制作しているので、自分の気持ちの状態や、体調がダイレクトに制作に影響しやすいため、それらも整えないといい作品ってできないのだな、と思います。どのお仕事にも共通しそうです。

いくつか、自分の中でこれやってると調子いい、と気づいた事を紹介しようと思います。

①寝て一度頭をリセットする

 〆切直前だと特に効果があります。寝て起きた時が1番頭がスッキリしていて絵が描けるので、制作スケジュールが押していて、仮眠をとる場合じゃない時でも寝る。脳が疲弊してきたらこれが大事だと思っています。個人的には20分や90分の仮眠がおすすめです。

②息抜きをすること

 これは先日聞いたのですが、日本代表の水泳選手で毎日練習漬けだったのに成績が伸び悩んでいた人が、買い物や外での活動を取り入れるようにしたら、かえってタイムが伸びたという話。

行き詰まった時に一度離れてみることで、視点も変わり新しい力が引き出される。芸術も同じで「余白の時間」も大切なのだと思います。

③作品のいい所を見つける

 1人で制作して煮詰まっていた時に、友人に絵を見てもらい「ここいいんじゃない?」「これ、結構いいよ!」と言ってもらえると救われたような、前向きな気持ちになります。それと同時に、「あれ、いいかもしれない」と思えてきて自信をもって進めた経験が何度かありました。そうしていると作品もどんどん良くなっていく気がします。

けれど、いつも友達がいてくれるわけではないので、制作中は心の中に友達を住まわせています。

心の中の友達?

 ワークショップ中に自分が作った作品に対して「こんなの嫌だ」「これを作りたいんじゃないよ〜」と向上心ゆえに悔しい気持ちを伝えてくれる子どもたちの気持ち、すごくよくわかります。

そういう時は「ここもいいし、ここもいい。これを作り進めるのはどうだろう?」などいい所を伝えて前進するサポートを心がけています。視点を変えて作品と向き合ってもらえたらいいなと思っています。

手を動かしたら見えてくる

 色々と書きましたが、未来の自分に伝えたいのは「ある程度決まってきたら、描いていいよ!」という事です。描く事でやりたい事も見えてくる。また、私の場合絵が何枚か完成してくると絵どうしが関係をおび、全部が繋がって見えてきて、頭もクリアになり一気に複数の絵をを完成できたり、展示全体でやりたい事が見えたりします。

粘土も同じですが、作ってみたら見えてくる事が沢山あります。改めて覚えておきたい事だなと思いました。